歯周病専門医による症例報告10【典型的な歯周治療】

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この症例は典型的な歯周病治療の症例です。

基本治療に始まり、不良補綴物の除去、感染源の除去、プロビジョナルレストレーションの装着、歯周外科、口腔機能回復治療とフルコースで行っています。

本症例では自費治療は一切行わず、保険治療のみを行っているところもご参考になるのではないでしょうか?

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患者概要

年齢・性別

65歳 男性

初診日

2008年7月29日

主訴

歯周病の治療がしたい

家族歴

父親が癌、母親が脳出血が原因で他界している。当時の口腔内状況は明らかではないが、両親ともに義歯は使用していなかったとの事だった。その他に2歳離れた弟がいるが特筆すべき全身疾患もなく、義歯等の装着は行っていないとの事であった。

全身既往歴

カニ、サバにアレルギーを持っており、食べると喉がかゆくなったりする程度とのことであった。

職場の健康診断にて高コレステロール血症であるとの検査結果を受け、その後近隣の内科を受診し特に投薬等の治療は必要ないと判断され、食事療法と運動療法を行っている。

また季節性の高血圧症があり、気温が下がる秋〜冬は一時的に血圧が上昇するとのことであった。

局所既往歴

数年前より近隣の歯科医院を定期的に受診しており、主に齲蝕に関する治療を施されていた。

ブラッシング指導や歯周病に関する根本的な治療は一切施されず、急性症状がある場合に対応するといった状況であったとの事だった。

特に27の発赤・腫脹を1年間から繰り返しており当時の担当医に相談したところ、専門的な治療が必要と判断され当院を受診する事となった。

全身所見

体格は中肉中背で、栄養状態は良好であった。上述の通り季節性の高血圧症があり、冬の時期は平常時の収縮期血圧が150を超える事もあった。

また30代の頃より花粉症を患っており、以前は花粉の季節になると市販の薬も病院で処方された薬も奏功せず、蕁麻疹や体調の悪化のため、出勤する事が出来ずに自宅療養をすることもあったとの事であった。

現在は急激な症状は無くなり、鼻炎のみであるとの事であった。

口腔内所見

歯列・咬合所見

27が欠損しており、下顎前歯部には咬耗と叢生が認められ、臼歯部は上下ともに歯頸部の適合状態が悪い補綴物が装着されていたためプラークリテンションファクターとなっていた。

咬合平面はカンペル平面と平行であったが、上顎前歯の歯軸が傾斜していた。咬頭嵌合位では特に早期接触を認めず、左右側方運動時では13〜16, 18, 23〜26, 33〜36, 43〜47での誘導が認められ補綴物の咬耗が認められた。

24は歯肉縁下に及ぶ根面齲蝕が認められた。

歯周組織所見

全顎的に歯肉の腫脹とプラークの付着を認め、22は根尖近くまで歯肉が退縮している状態であった。

デンタルエックス線写真上では全顎的に歯根長の1/3以上の中等度〜重度の水平性骨吸収を認め、特に31, 32, 41, 42は歯根の2/3に及ぶ歯槽骨の吸収が認められた。

また36, 46にはLindhe&Nymanの分類3度の根分岐部病変が認められ、37にはⅠ度の根分岐部病変が認められた。15, 36, 46には垂直性の骨吸収像が認められた。

全身的および局所的リスク因子

  • プラーク
  • 下顎前歯部の叢生
  • 多数歯にわたる不適合補綴物

臨床診断

広汎型・中等度・慢性歯周炎

治療計画、治療目標(初診時)

①患者教育

ブラッシングの徹底および歯周疾患に関する説明

②感染源の除去

全顎的なスケーリング・ルートプレーニングおよび抜歯(24,31,41,42)

③不良補綴物および不良充填物の除去

11〜15,17,21〜26,34〜37,45〜47不適合補綴物を除去

④動揺歯の固定、その他

プロビジョナルレストレーションによる動揺歯の固定および咬合調整、根管処置・歯根分割(15,21,22,36,46)

⑤歯周外科手術

再評価後,残存するポケットへの歯周外科処置(自家骨移植を含む)

⑥補綴処置

14・15に連結冠装着、16〜18、13〜26にブリッジ装着、33〜43にブリッジ装着、36,37に局部床義歯装着

⑦メインテナンスへ移行

歯周外科手術の種類とその術式選択の目的

32近心に垂直性骨欠損があったため自家骨移植術を併用したフラップキュレッタージを行う計画をした。

13〜15は4㎜のポケットが認められ十分な角化歯肉が存在したため非移動型切除型フラップ手術を行う事とした。

また21〜23は4mmのポケットが存在したことと、21,22間の歯肉形態が凹型であったため歯槽骨整形を行いワンピークの歯槽骨形態に整え歯肉弁を根尖側に移動させることを計画した。

45〜47は4㎜のポケットが存在したことと47近心に垂直性骨欠損が認められた事から自家骨移植術を併用したフラップ手術を行うこととした。

治療時の留意点(治療計画の修正等)

当初36, 37の根分岐部病変に対しては歯根分割術にて保存する予定だったが、歯周基本治療中の遠心根の歯槽骨吸収が著しく保存不可能と判断したため抜歯を行った。

また歯周外科に関しては患者の季節性の高血圧症を考慮し、寒い季節を避け春から初夏に行う事にした。

治療経過

2008年7月から2008年8月

口腔清掃指導、歯肉縁上スケーリング、42自然脱落

2008年8月から2011年2月

抜歯(24, 31, 36, 37, 41, 42)、不良補綴物の除去とプロビジョナルレストレーショの装着、スケーリング・ルートプレーニング、根管治療(15, 21, 22, 36, 46)

2011年3月

46歯根分割術

2011年6月

32, 33, 43に対する自家骨移植を併用したフラップ手術

2011年8月

13〜15に対するフラップ手術(非移動型切除型フラップ手術)

2011年9月

21〜23に対する骨整形術を併用した歯肉弁根尖側移動術

2012年5月

45〜47に対する自家骨移植術を併用したフラップ手術

2012年5月から2012年11月

補綴処置(14, 15に連結冠装着、16〜18、13〜26にブリッジ装着、33〜43にブリッジ装着、36,37に局部床義歯装着)

2013年2月から

SPTへ移行

今後起こりうる問題点

ブラキシズムがあるためバイトプレートを装着しているが、今後も厳密な咬合管理を行っていく必要があると考えられる。

また下顎前歯部ブリッジのポンテック下が不潔となりやすいためモチベーションの維持に努める。

メインテナンス時の問題点とその対応

上顎は全顎的に連結された補綴物が装着されているため歯間部の清掃が不良となりやすく、歯周ポケットの再発およびフッ化物を応用しての二次齲蝕の防止に努める必要があると考えられる。

症例写真

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