歯周病専門医による症例報告5【典型的な歯周治療】

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この方は本来レジン前装冠ではなく、陶材焼付鋳造冠で補綴するのがベストですが、経済的な理由から自費の硬質レジン前装冠を装着しています。

また上顎前歯部に隙があったので補綴で修正しました。

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患者概要

年齢・性別

67歳 男性

初診日

2009年6月3日

主訴

右下奥歯が痛い

家族歴

両親とも癌が原因で亡くなっており、父は局部床義歯を装着していたとのことであった。

全身既往歴

10歳頃に肺炎を患ったが、現在は特に問題ないとのことであった。また高血圧症(収縮期血圧140、拡張期血圧80)と診断され、現在はノルバスク錠2.5㎎を一日2錠服用し、血圧は安定しているとのことであった。その他特記すべき事項は無い。

口腔既往歴

数年前より近隣の歯科医院にて齲蝕に対する治療を行い、以後良好に経過していた。3か月前より右下奥歯の痛みが不規則に続き、改善が認められないため心配になり来院した。

全身所見

体格は中肉中背で栄養状態は良好であった。職業は自営業を営んでおり治療に関する時間的な制約は無いとのことであった。

日常的な飲酒の習慣はあるが過度の飲酒は無く、喫煙の習慣も無いとの事であった。上述のとおり血圧も安定しており、その他特記すべき疾患は無い。

口腔内所見

下顎前歯部には叢生が認められ17, 27は頬側に傾斜し、37, 46, 47は近心に傾斜していた。12〜22がフレアーアウトしていた。11, 21間が離開しており同部および41〜43間にコンポジットレジンが充填してあったが、プラークリテンションファクターとなっていた。

バーティカルストップは維持されており咬頭嵌合位での早期接触は認められなかったが、右側方運動時に16, 17, 46, 47左側方運動時には26, 27, 36, 37での咬頭干渉が認められた。

またアンテリアガイダンスが確立しておらず、前方滑走運動時に大臼歯部での咬頭干渉が認められた。

全顎的に歯肉の腫脹とプラークの付着を認め、PCRは71.3%であった。デンタルエックス線所見では11〜13, 21〜27, 31〜34, 37, 42 〜47に歯根長1/3に及ぶ水平性の歯槽骨吸収像を認め、11, 12, 31, 32には歯根長2/3に及ぶ歯槽骨吸収像を認めた。

歯周組織検査では11〜17, 21〜27, 31〜37, 42〜47に4㎜以上の歯周ポケットを認め、特に11, 13, 16, 17, 22, 24, 26, 27, 34, 36, 37, 47には7㎜以上の歯周ポケットを認めた。また36にはLindhe&Nymanの分類Ⅱ度、46にⅠ度の根分岐部病変を認めた。

12, 14, 16, 21, 27, 36, 43〜46にMillerの分類1度、11, 22, 26, 31, 32, 34, 37, 47に2度の動揺を認めた。また上顎前歯部口蓋側歯頸部にテンションリッジおよびフレアーアウトが認められたことから口呼吸が疑われたが、本人は自覚していないとのことであった。バイオタイプはThick-Flatであった。

全身的リスク因子

特記すべき事項なし

局所的リスク因子

プラークコントロール不良および歯列不正

臨床診断

広汎型・中等度・慢性歯周炎

治療計画、治療目標(初診時)

①患者教育とモチベーション

プラークコントロールの重要性および歯列不正の為害性を認識させる

②感染源の除去

ブラッシング指導、全顎的なスケーリング・ルートプレーニング、プラークリテンションファクターの除去

③炎症の安静化

上顎フレアーアウトおよび下顎叢生に対する矯正治療、動揺歯に対するプロビジョナルレストレーションおよびA—スプリントを用いた暫間固定

④再評価

再評価後、残存する歯周ポケットに対する歯周外科処置(EMDを用いた歯周組織再生療法)

⑤口腔機能回復治療

再評価後、口腔機能回復治療(11〜13, 21〜23に前装鋳造冠、14〜16, 24, 26, 36, 37に全部鋳造冠、33〜43に前装鋳造ブリッジ装着)

⑥メインテナンスへ移行

歯周外科手術の種類とその術式選択の目的

36近心、37遠心および47近心に垂直性骨欠損を認めたためEMDを用いた歯周組織再生療法を行う計画をした。

また24〜27には垂直性骨欠損を認めたが、歯周ポケットが5㎜であったため自家骨移植術を併用したフラップ手術を行うこととした。

治療時の留意点(治療計画の修正等)

上顎前歯部にフレアーアウトを認めたため矯正治療を行う予定であったが、患者の同意が得られなかったことから段階的に支台歯形成を行い、二次象牙質の形成を待ちながら少しずつ歯軸を是正していった。

また24は患者の希望により前装鋳造冠にて補綴することとし、27は低位咬合であったため37を削合し、27の自然挺出後36, 37に歯間部に間隙を設けた補綴物を装着し清掃性を確保する事とした。

治療経過

2009年6月から2009年8月

患者教育、口腔清掃指導、歯肉縁上スケーリング

2009年8月から2010年8月

不適合鋳造冠の除去(14, 16, 24, 36)とプロビジョナルレストレーションの装着、 全顎的なスケーリング・ルートプレーニング

2010年8月から2010年9月

11, 13〜17, 22, 24〜27, 33, 34, 36, 37, 42, 45〜47に対する再SRP

2010年10月

36, 37に対するEMDを用いた歯周組織再生療法

2011年1月

46, 47に対するEMDを用いた歯周組織再生療法

2012年1月

24〜27に対する自家骨移植術を併用したフラップ手術

2012年2月から2012年11月

口腔機能回復治療(11〜13, 21〜24に前装鋳造冠、14〜16, 26, 36, 37に全部鋳造冠、33〜43に前装鋳造ブリッジ装着)およびバイトプレートの装着

2012年12月から

SPTへ移行

今後起こりうる問題点

デンタルエックス線所見で47近心に垂直性骨欠損が認められるが、歯周組織検査では歯周ポケットは無く前方・側方運動時にも咬頭干渉が無いこと、プロービング時の出血も認められないことから歯周組織は安定していると考えられるが、今後の課題として遊離歯肉移植術を行いさらなる歯周組織の安定を確保していく予定である。

また日常的なクレンチングが存在するとのことであったため継続的なバイトプレートの使用を指導している。

メインテナンス時の問題点とその対応

27, 37, 46, 47は近心傾斜しておりプラークが溜まりやすく咬合時の負担もあると考えられることから、引き続きバイトプレートを用いた厳密な咬合の管理とプラークコントロールの徹底が必要であると考えられる。

36頬側分岐部病変は現在Lindhe&Nymanの分類Ⅰ度にまで改善しているが、ブラッシング状態により歯周ポケットが再発する可能性があるため同様に継続したブラッシング指導とモチベーションの維持を行っていく必要がある。

症例写真

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