歯周病専門医による症例報告9【典型的な歯周治療】

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この症例は歯周病患者さんにおいて プラークコントロールが重要だということを再認識させられた症例です。

下顎の第一大臼歯は本来なら軟組織移植を行い、ポンティック下の歯肉幅を増加するべきでした。

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患者詳細

年齢・性別

57歳 女性

初診日

2008年2月27日

主訴

左下の歯が痛む

家族歴

父親が骨髄腫のため5年前に亡くなっており、生前は歯科医院に通院する事は数回しかなかったとの事であった。母は心不全の既往があるが現在問題なく特に服薬はしておらず、口腔既往歴として義歯を数年前より装着しているとのことであった。

現病歴

一年ほど前に近隣の眼科にて緑内障の手術を行ったとのことであった。現在も定期的に眼下を受診しているが特に異常は認められないとの事であった。その他特記すべき事項は無い。

口腔既往歴

以前より虫歯や欠損が気になり治療の必要性を感じていたが、父親の介護などの事情により多忙で歯科治療を受ける時間が無かった。

現在は父親が他界し、時間的な余裕ができた事と母親の介護が近い将来必要になってくるかもしれないと考えたため、これを機に口腔内全般を治療したいと考え当科に来院した。上顎の補綴物は10年ほど前に装着しており、34, 36, 44, 46の喪失理由はよく覚えていないとのことであった。

全身的な所見

体格は中肉中背で栄養状態は良好であった。定期的な健康診断は行ってはいないとの事だったが、特に自覚症状のある疾患は無く通院もしていない。過度の飲酒習慣や喫煙習慣もなく、家族内に喫煙している者もいないとの事であった。


口腔内所見(歯列)

上下顎とも小臼歯、大臼歯に補綴物が装着されバーティカルストップは確立されており、早期接触は認められなかった。右側方運動時の咬合様式は犬歯、小臼歯および大臼歯でのグループファンクションであったが、左側方運動時には26, 36での咬頭干渉が認められた。

また前方運動時には臼歯部での咬頭干渉は無くアンテリアガイダンスは確立されていた。31, 32の叢生と44の唇側転移が認められ、14, 15, 26, 31〜33, 41のくさび状欠損と43, 44の根面齲蝕を認めた。

歯周組織所見

口腔清掃状態は不良で全体の68.3%にプラークの付着が認められた。また16, 17, 24〜26, 34〜36, 45, 47の不適合補綴物と22, 23, 33, 34の不良充填物を認めた。

歯周組織検査では4㎜以上の歯周ポケットを多数歯に認め、36, 37, 47に6㎜の歯周ポケットおよび36頬側中央部にプロービング時の排膿を認めた。

また31, 41にMillerの分類1度の動揺を認めた。

デンタルエックス線所見では36にLindhe&Nymanの分類3度の根分岐部病変を認め11, 13〜17, 22, 23, 31, 32, 36, 37, 41, 42, 44, 47に歯根長1/3に及ぶ水平性骨吸収像と16遠心、27遠心、37近心に垂直性骨吸収像を認めた。

また38, 48の骨性半埋伏を認めた。

リスク因子

  • プラーク
  • 外傷性咬合

臨床的診断

限局型・中等度・慢性歯周炎

初診時の治療計画

①患者教育とモチベーション

プラークコントロールの重要性および外傷性咬合の為害性を認識させる

②感染源の除去

ブラッシング指導、全顎的なスケーリング・ルートプレーニングおよび38, 48の抜歯、36近心根ヘミセクション、プラークリテンションファクターの除去

③プロビジョナルレストレーション

暫間固定およびプロビジョナルレストレーションの装着(17, 25〜27, 35〜37, 45〜47)

④歯周外科手術

再評価後、残存するポケットに対する歯周外科処置(自家骨移植術を併用したフラップ手術)

⑤口腔機能回復治療

再評価後、口腔機能回復治療(16, 17, 24〜26, 34に対する全部鋳造冠および35〜37、45〜47に対する全部鋳造ブリッジの装着)

⑥メインテナンスへ移行

歯周外科手術の種類と選択目的

歯周基本治療終了後、47は舌側に4㎜の歯周ポケットが認められボーンサウンディングにより垂直性の骨欠損が疑われたため自家骨移植術を併用したフラップ手術を行う事を計画した。また24〜27は4㎜以上の歯周ポケットが認められ頬側は十分な角化歯肉が認められなかったことから骨外科を伴う歯肉弁根尖側移動術を行い口蓋側は非移動型の切除型フラップ手術を行うこととした。

治療計画の修正および留意点

当初36はヘミセクションを行い遠心根を35と連結し保存する予定であったが、近心根の抜去後動揺が顕著になったため抜歯を行う事とし、35〜37を固定性ブリッジで補綴することとした。

治療の経過

2008年2月から2008年6月

患者教育、口腔清掃指導、咬合調整、歯肉縁上スケーリング

2008年6月から2009年10月

抜歯(38, 48)、全顎的スケーリング・ルートプレーニング、37の根管処置、36ヘミセクション

2009年11月から2010年11月

不適合鋳造冠の除去およびプロビジョナルレストレーションの装着(17, 25〜27, 35〜37, 45〜47)、コンポジットレジン修復(14, 15, 22, 23, 33, 43, 44)、36抜歯

2010年12月

47に対する自家骨移植術を併用したフラップ手術

2011年5月

24〜27に対する骨外科を伴う歯肉弁根尖側移動術

2011年5月から2012年10月

口腔機能回復治療(16, 17, 24〜26, 34, 37に全部鋳造冠,35〜37および45〜47に全部鋳造ブリッジ装着)

2012年11月から

メインテナンスへ移行


今後起こりうる問題点

今後考えられる問題点として、35〜37, 45〜47ブリッジポンティック部の清掃が不良となりやすいため二次齲蝕や歯周ポケットの再発が挙げられる。

また咬合調整を行った事により14, 15, 23, 24, 32, 33, 43, 44頬側歯頸部歯肉のクリーピングが起きている事から初診時の歯肉退縮およびくさび状欠損の原因が咬頭干渉であったことが考えられる。

メインテナンス時の問題点とその対応

現在歯周組織は安定しているが生理的な咬耗に伴う早期接触の発生や側方運動時の咬頭干渉が予想されることから咬合の管理を継続的に行っていく予定である。

またブリッジ部の清掃性が不良となりやすいことから引き続きモチベーションの維持とブラッシング指導に努めたい。

症例写真

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