歯周病専門医による症例報告1【コーヌステレスコープ】

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この方はゴルフが趣味でインパクトの瞬間に歯をくいしばるため歯根が破折してさらに歯周病もあったという患者さんです。

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症例写真

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患者概要

年齢・性別

53歳 男性

初診日

2008年9月3日

主訴

前歯にインプラントをしたい

家族歴

父親が大腸がんにて他界しており、口腔内の状況は不明だが義歯を装着していたとの事であった。また母親は健在だが義歯を装着しているとのことであった。

現病歴

一年前より近隣の医院にて高血圧症(140/78)と診断され、ミカルディス錠40mg服用による治療を行っているとのことであった。現在血圧は安定しており特に問題は無い。その他、高尿酸血症のためウラリットU錠とユリノーム錠を服用しており安定しているとのことであった。

4年前に21〜23が歯ぎしりによる外傷が原因で歯根破折し、近隣の歯科医院にて抜歯を行った。その後局部床義歯を装着し良好に経過していたが、最近になりインプラント治療があるという事を知り前歯をインプラント治療したいと思うようになり当科へ来院した。34〜37, 44〜47欠損部の補綴はされていなかった。

全身所見

体格は中肉中背で栄養状態は良好であった。日常的な飲酒の習慣があり夕食時に350㎖の缶ビールを2本ほど飲むとのことであった。喫煙経験は一切なく、家族内にも喫煙をしている者はいないとのことであった。

また趣味としてゴルフをよくするとのことでインパクトの瞬間に食いしばりを自覚しており、起床時の顎の疲労感を自覚することもあるとのことであった。


口腔内所見

13に齲蝕が認められ21〜23, 34〜37, 44〜47が欠損しており咬合面にレジン添加された局部床義歯が装着されていた。12, 41前装鋳造冠切縁の咬耗および13, 31〜33, 42, 43切端の咬耗と象牙質の露出が認められ、ブラキシズムが疑われた。

義歯装着時の咬頭嵌合位では11〜13, 41〜43でのみ接触し、義歯を外した状態では切端咬合位をとっており11〜13, 41〜43で接触しておりバーティカルストップは維持されていなかった。

また右側方運動時には13, 43で誘導し、左側方運動時には誘導歯が無く、前方運動時には11〜13, 41〜43で誘導しておりアンテリアガイダンスは確立されていた。また26が頬側に傾斜していた。

ブラッシングには時間をかけているとの事であったが多数歯にわたるプラークの付着が認められ、PCRは66.7%であった。歯周組織検査では11〜13, 15, 17, 24〜27, 33, 41に4㎜以上の歯周ポケットが認められ、17には7㎜の歯周ポケットが認められた。

15, 24にMillerの分類1度、11に2度の動揺を認めた。また11, 15, 17, 24, 27, 41に不適合鋳造冠が認められプラークリテンションファクターとなっており、11〜13, 17, 24〜27にプロービング時の出血が認められた。

デンタルエックス線所見では11, 17に歯根長1/3以上に及ぶ歯槽骨の吸収と17の歯肉縁下歯石様不透過像が認められ、13, 33に歯根膜腔の拡大が認められた。

全身的リスク因子

特記すべき事項なし

局所的リスク因子

  • プラークコントロール不良
  • 不適合な義歯の装着
  • ブラキシズム

臨床診断

広汎型・中等度・慢性歯周炎

治療計画、治療目標(初診時)

①患者教育とモチベーション

ブラキシズムによる咬合性外傷の為害性およびプラークコントロールの重要性を認識させる

②感染源の除去

ブラッシング指導、全顎的なスケーリング・ルートプレーニング、11, 15, 17, 24, 27, 41不適合鋳造冠の除去、11, 12, 24根管治療

③炎症の安静化

プロビジョナルレストレーションによる動揺歯の固定および咬合調整、治療用義歯の装着

④再評価

再評価後、残存する歯周ポケットに対する歯周外科処置および13, 24への遊離歯肉移植術を行う

⑤補綴

再評価後、口腔機能回復治療(上下顎コーヌステレスコープ義歯装着)

⑥メインテナンスへ移行

歯周外科手術の種類とその術式選択の目的

17は主に口蓋側近心に4㎜の歯周ポケットが残存していたが分岐部が露出する可能性があることと頬側に十分な角化歯肉が無かったことからフラップキュレッタージを行った。また13は歯周ポケットが歯肉頬移行部を超えて4㎜存在していたため歯肉弁根尖側移動術を併用した遊離歯肉移植術を行い、歯周ポケットの除去と角化歯肉の獲得を試みた。

治療時の留意点(治療計画の修正等)

当初、24に対しても歯肉弁根尖側移動術を併用しての遊離歯肉移植術を行う予定であったが、高血圧症が悪化し患者の要望もあったため手術を行わないこととした。

治療経過

2008年10月から2009年6月

患者教育、口腔清掃指導、歯肉縁上スケーリング、咬合調整

2009年7月から2010年11月

口腔清掃指導、全顎的スケーリング・ルートプレーニング、不適合鋳造冠の除去 とプロビジョナルレストレーションの装着(11, 15, 17, 24, 27, 41)、34〜37,  44〜47遊離端欠損部に対する治療用義歯装着, 根管治療(11, 12, 24)

2010年12月

27抜歯、26に対する再SRP

2011年2月

17に対するフラップキュレッタージ

2011年4月

13に対する遊離歯肉移植術

2011年12月から2013年2月

口腔機能回復治療(上下顎に対するコーヌステレスコープ義歯装着)

2013年3月から

SPTへ移行

今後起こりうる問題点

当初、患者の要望は前歯部に対するインプラントによる機能回復であったが、ブラキシズムと多数歯にわたる動揺および前歯部顎堤の形態からインプラント治療により長期的に良好な予後を獲得することが困難であると判断し、患者の同意も得られた事からコーヌステレスコープ義歯による口腔機能回復治療を行うこととした。

27は歯根離開度が狭く十分な根分岐部の掻爬が不可能である事と歯肉縁下齲蝕が認められた事から予後不良と判断し抜歯を行った。ブラキシズムに対してはコーヌステレスコープ義歯を就寝時も装着しているためバイトプレートは装着していない。

また11, 12, 13は歯冠長が短く歯肉縁下まで形成し生物学的幅径を超えているため歯周ポケットは認められないが、現在はSPTとして管理している。

メインテナンス時の問題点とその対応

現在のところ問題は出ていないが、患者は日常的なブラキシズムと趣味のゴルフを毎週末行っていることから過大な咬合力が上下顎コーヌステレスコープ義歯を介し残存歯にかかると考えられる。今後は緊密な咬合の管理を継続的に行っていくほか、義歯の咬耗や顎堤の経時的な変化に即座に対応していく必要があると考えている。

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