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口臭の悩み
私は職業柄もあり口臭に関する質問をよく受けます。
中には話している相手が花を指で掻いただけでも自分は口臭が強いんじゃないかと不安になっている患者さんもいらっしゃいました。
口臭とは文字通り、吐く息などによって口から出される悪臭のことを言います。
口臭は、現代社会における“スメル(=臭い)ハラスメント”と言われ、社会問題になりつつあります。
1999年に厚生労働省が行った保健福祉動向調査によると、約10人に1人が「口臭が気になる」と回答しました
そこで今回は社会問題ともなりつつある口臭について深く掘り下げていこうと思います。
口臭の種類
① 生理的口臭
これがもっとも多い相談のひとつです。口臭は体臭のひとつですから汗の匂いと同じく完全に消し去ることはできません。
この相談が多いのは特にお子さんを持つお母さんからが非常に多いです。
子供は新陳代謝が活発なので口の中も老廃物が出るのと大人と比べ口腔清掃がままならないこと、まだ筋力が弱かったり、鼻が詰まりやすかったりと言う理由で口をポカンと開けていることが多いことが原因です。
口の中が乾燥したりすることで匂いは強くなるため口呼吸をする癖がある方に多いのも特徴で、スポーツのあとも口の中が乾きますので生理的な口臭が出たりします。
② 心理的口臭
これは実際は口臭が無いにもかかわらず自分は口臭が強いのでは無いかと錯覚してしまう状態です。
この相談をよく中年の女性から受けます。
先ほど文頭でもお話ししたように洋服を買いにお店に行ったときにショップ店員と一緒にあれやこれやと似合う服を探しているときに不意に店員が鼻を親指で掻いたの見て自分は口臭があると思い込んでしまって、それからも人と話すたびに口臭から頭が離れず会話に集中できないというところまで行く方もいます。
③ 真性口臭
これは明らかに口臭がある正真正銘、ほんものの口臭のことを指します。
このご相談が多いのは家族や配偶者から指摘されることがきっかけのことが多いです。年齢としてはサラリーマン生活を終えて定年退職をした65歳くらいの男性に多いです。
リタイヤして自宅にいる時間が増え、家族と接する時間が増えることによって指摘される機会が多くなったことと、老後の生活を楽しく過ごすためにリタイヤ直後に歯科医院に通い始めることが大きな理由のようです。
口臭の原因
口臭の原因は大きく分けて3つに分けることができます。真性口臭の多くは2つ以上が重なって口臭を発生していることが多いです。
① 口から来る口臭
口臭のもっとも大きな原因がこの口からくる口臭です。
特に口の中で口臭を発生させやすい場所が歯間部にプラークが詰まり成熟することにより強い匂いを発生します。
その他には虫歯や歯周病も口臭発生の原因で、とくに歯周病はプラークのなかで嫌気性細菌が多く生息していますから特に強い臭いを発生させます。
口臭のほとんどが口の中の気体が原因であることが分かっています。
口の中で生息している嫌気性細菌が、唾液、血液、古くなった細胞或いは食べカスで出来たプラークの中のタンパク質などを分解して、臭いの元である硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルサルファイドと呼ばれる揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds: VSC)を産生することにより、口臭が生じます。
嫌気性菌の特徴についてはこちらをご参考にしてください。
特に起床時、空腹時や緊張時には唾液の分泌量が減るため、細菌が増殖し、VSCの産生が活発になるため、いつもより口臭が強く感じられることがあります。
そして忘れてはいけないのが、舌についているプラークです。健康な舌は薄く白みがかった白色をしています。
もしも舌の上に白い厚みのある層があったり黄色味がかった色をしている場合はそれが原因となっている場合が多いです。
② 胃から来る口臭
これは通常の歯科治療でもある程度予想することができます。
先ほどもお話しましたが、舌の上が黄色なっている場合は消化管に何かしらの以上があることが予想されます。
生きている上で多少の胃腸の不調はありますから慌てる必要はありませんが、しばらくお口全体を清潔に保つように心がけて様子を見てみましょう。
もし清潔に保ってもまだ舌が黄色く変色しているようであれば、胃腸科を受信することも考えたほうが良いでしょう。
舌はその他に鉄が不足することにより起きる貧血や癌の前段階である『白斑』というものができたりすることがありますから変化は日頃からチェックしたほうが良いです。
③ 喉から来る口臭
これは実はあまり知られていませんが、喉が原因で起きる口臭も強い臭いを発します。
喉の奥には扁桃腺がありますが、その周りはバイ菌が侵入したときに少しでも多く扁桃腺の近くを菌が通過するようにデコボコの形状をしています。
本来はその窪みのなかでやっつけられた細菌の死骸はそのまま剥がれ落ちて胃に行くのですが、人によってはこのデコボコの形が強くて深く窪んだ形をしている人もいます。
その深い凹みに細菌の死骸と生きた菌の塊であるとプラークがたまり、俗に言う『くさい玉』と呼ばれる直径5ミリくらいの白い玉が出来上がります。それが強い臭いを発するようになります。
くさい玉があるかどうか調べる方法は懐中電灯を持って鏡の前に行き、大きな口を開けて喉の奥を照らすと見えます。
のどの端に白い玉のようなものがあればそれが『くさい玉』です。
「臭い玉」については下のページに詳しく掲載しています。
口臭が一番強くなる時間帯
口臭は1日のうちでも強くなる時間帯があります。
それは朝起きた時です。生理的口臭のところでもお話ししましたが、口臭は口の中が乾燥すると強くなります。
特に子供は口をポカンと開けて寝ていることが多く、普段の口腔清掃も思うようにやらせてくれませんから口臭が発生しやすいです。
しかし子供はよっぽど口の中が不潔であれば別ですが、少し臭いがするぶんにはあまり気にしなくて大丈夫です。
その他には一般的に臭いの強い食事をしたあととアルコールを飲んだ翌日は強くなる傾向があります。
特にアルコールは飲んだ本人はあまり気づきませんが、アルコールが分解されてケトン体が体の中で生成されるため、口臭だけでなく体全体が匂います。
口臭を防ぐには
① 生理的口臭を防ぐには
生理的口臭は生きている間は消すことができませんが、ある程度抑えることはできます。
私の経験上生理的口臭は不摂生な生活によっても増しますからまずは規則正しい生活を送ることが大切です。
その上でさらに生理的口臭を抑える方法としてキシリトールガムを噛むことをお勧めします。
キシリトールガムは虫歯になりにくいガムですが、その他にガムを噛むと唾液がよく流れるようになり口の中の体液循環が活発になり、唾液腺に詰まっている老廃物を流し出すことができるからです。
また舌をきれいに保つことも口臭予防には大切です。
特に生理的口臭の予防のためには、歯磨きやデンタルフロスに加えて“舌みがき”による舌苔(ぜったい)除去を行い、舌を清潔に保つようにしましょう。
私は朝起きて歯を磨いたときについでに舌を磨くようにしていますが、専用の舌ブラシを使っても良いと思います。
歯ブラシに比べて表面が柔らかく、舌にそった形をしているため舌を磨くのに向いています。
もし舌ブラシを使うとしたら私のおすすめはSHIKIEN社というところが開発した『W-1 ST』です。
これは、舌表面を傷つけないように開発されたソフトで特殊なナイロン繊維を使用しるため、痛みなく舌を磨くことができます。
舌を磨いた後は軽く指でこすって清潔に保つようにしてください。
舌ブラシに関する詳しい情報は下のページをご参考にしてください。
もう一つの方法は ”水分をこまめにとる” と言うことです。
先ほどのガムもそうですが、体液が新鮮であればあるほど生理的な口臭は弱めることができます。
中年男性に体臭が多い理由の一つが生活が不摂生になりがちで体液の循環が滞ってしまっていることも一つの原因です。
アルコールは水分を摂取しているようで実は体の細胞から水分を奪い去ってしまっているので結果として、水分補給にはなりません。
アルコールを飲むとおしっこがよく出るのは体の中の細胞が溜めていた水分を奪ってしまった結果だからです。
② 心理的口臭に対する対処
これについては、カウンセリングしかありません。
私はこれについて相談を受けそうだなと感じた時は相談を受ける前からマスクを外して相手の訴えを面と向かって聞くようにしています。
そして相手が話し終わった時に『今まで会話をしてきたけれどもこの距離で特に口臭は感じないので、おそらく心理的に心配になっているだけであって実際は口臭はないと思います。
私の性格上、『口臭があればあるとはっきりと申しますからご安心ください。』という対応をするようにしています。
それでも口臭が心配な方には思い切って、ご家族や近しい方に聞いてみては?というご提案もしています。
また口臭を専門に治療している医院
口臭の原因はひとそれぞれ!だから専門家に聞くのが手っ取り早いです。
③ 真性口臭を防ぐには
これは治療が必要な口臭です。多くの場合は歯周病が原因で発生しますからその治療に専念することをお勧めします。
その他にイレギュラーなケースとして親知らずを抜いたあとに口臭が発生することがあります。
親知らずをぬくと大体直径1㎝くらいの穴が口の中に飽きた状態になります。
1週間くらいすると穴を上皮が覆うので治ったことになるのですが、まだ窪んだ状態のままなのでそこへ汚れが詰まってくさい玉同様、強い匂いを発するようになります。
親知らずはもともと磨きにくい場所に生えてますから、抜いたあとの穴もしばらくはうがいで洗い流しにくい状態が続くためです。
まとめ
口臭は3つに分けることができますが、多くは生理的な口臭とその他の2つが同時に起きていつことが多いです。
少しでも口臭を減らすためには基本的なことですが、規則正しい生活を送り、口の中を清潔に保つことが重要です。
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